綾瀬女子高生コンクリート詰め殺人事件

1989年3月29日・東京

 類のない凶悪な少年犯罪である。
 足立区で19歳のホステスを強姦して逮捕され、練馬少年鑑別所に送致された少年Aは、担当の刑事がなにげなく言った「お前、人を殺しちゃ駄目じゃないか」という言葉に、「すいません、殺しました」と答えた。他の3人が自供したと勘違いしたのだ。
 担当官は半信半疑のまま、自供の内容にあった東京江東区若洲15号地の工場現場空き地へと向かった。コンクリート詰めのドラム缶がポツンと転がっていた。コンクリートの隙間から腐臭がしていた。
 中にはボストンバックに詰められ、掛け布団2枚にくるまれた若い女性の死体が入っていた。死後数ヶ月は経っているものと思われた。しかし、捜査員が驚いたのは遺体の惨状である。栄養失調状態で全身に打撲痕と火傷の跡があり、死因は外傷性ショックまたは、吐瀉物を詰まらせた窒息死とみられた。頭部が大きく変形していたため外見での照合はできず、指紋や歯形の照合から、前年の11月末に捜索願いが出されていた埼玉県の女子高生の少女(17)であることが判明した。
 少年と少女に面識は全くなかった。アルバイトからの帰り道に偶然、『鬼畜』に出くわしたのだった。少年らは少女に因縁を付け、溜まり場となっていた少年Bの家に連れ込み、少年4人で代わる代わるレイプした。地獄が始まった。
 逃げようとしてリンチされ、昼夜の別なく弄ばれ、気を失うとバケツの水に頭を突っ込まれ、無理やり覚醒されて再び犯された。少年の仲間内では、少女の存在は有名だったといわれる。裁判記録に出ているだけでも10人がレイプなどに加わっている。度重なる暴行で少女の顔は目の位置が判別不可能なほどに腫れ上がった。それを見て少年たちは「でけえ顔になったなぁ」と笑った。12月末には、少女はもう自力で立つことができなかった。
 年が明けた1月5日、賭け麻雀に負け気が立っていた少年Aが、小泉今日子の「なんてったってアイドル」のテープをかけ、歌詞の「イエーイ」に合わせて少女を殴打し始めた。少女は声を出すと殴られるため、痛みをこらえて顔を歪めた。その表情を見て少年たちは面白がった。少年4人がかりで少女に暴行を加えた。2時間近い暴行を受けた少女は、動かなくなった。
 主犯格の少年Aは懲役20年の判決で今も服役中だが、他の少年はすでに刑期を終えて出所している。出所した少年のひとりは、2004年に再び監禁致傷事件を起こし逮捕された。


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