ADB〜地脈の魔物〜小説A
悪いけど、死んでくれない?
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 宴もたけなわと言うことで、ホームパーティーは夜の11時に、一本締めで終わった。
 よぉー、ぽんっ! で締めたところ悪いけど、夜もとっぷりふけて、会社にしのびこむのに、ちょうど良い時間だ。
気分良く締まることなんて、今後ねーだろうな。

 

 見送りの心配を丁重にお断りして、私はカプセルコーポレーションの裏口にかくしてあった荷物を、引っ張りだした。
 自動拳銃が二丁と軽機関銃。予備の弾。
 一仕事する時にいつも着ている黒のタンクトップとジーンズのズボン。ブーツ、口元を隠す黒のスカーフ。
 どうどうと着替えて、マフラーを口周りにまくと、ホルスターを腰につけ、拳銃を納める。

 機関銃は・・・・・・おいていくか、地味に重いし。

 あと三十分もすれば、人気もまったくなくなる。
 社長室に向かうまでの防犯のカメラやセンサーはほとんど、こわした。
 緊急でなにかしら、設置してあるかもしれないけど、見逃さない自信は、ある。

 さあ、とっとと盗んでおさらばしよう。
 わたしはマフラーの中で、笑みをつくった。
 
 平和になって、たまるものか。



******


 イラータさんを家の前まで送ったものの、玄関で寝てしまいそうだったから、しかたなく鍵をあけて、ベッドまで運ぶことにした。
 
 女性らしい部屋だ。いや、真っ暗でほとんどわからないけど、化粧品かシャンプーか、とてもいい匂いが香ってくる。

「イラータさん、だいじょうぶですか? お水、いります?」

「むにゃ、だいじょうぶですぅ〜。ありがとう、ございますぅ〜。社長。ありがとうございます。助けて、いただいて、ありがとうございます。社長」

 うわ言のように、支離滅裂なお礼を言われ、苦笑いする。

「こちらこそ。ありがとうございました」

 トランクスが頭を下げると、寝息が聞こえてきた。
 生きている。当たり前に存在する人の息つぎに、顔がほころんだ。

 今日、遅くまで語り合ったみんなの顔も浮かぶ。
 
(悟飯さん。見ていますか? 俺、すごくしあわせです。しあわせだって、思って、いいですよね? これが、平和なんですよね)

 玄関のドアをあけると、また「ルンルンしゃん、むにゃ・・・・・・」と、寝言を言う声が聞こえた。

(ルンルンさんか・・・・・・)

 イラータの家を出て、夜道を歩きながら、黒髪の女性の姿を思い出した。

 気の強そうな、さばさばした人だけど、どこか寂しげで、気さくで、大胆で、母さんとも似ている気がする。

 
 かわいいと言うより、美人と言うより、美しい人だとも思う。

(またお礼をしないと、いけないな。どうすれば、よろこんでもらえるだろう。こういうのは、母さんに相談するのがいいかな。
 ・・・・・い、いや、それをダシに、からかわれそうだ。それに母さんのことだ、とんでもないアドバイスをされて、強制実行させられそうだ。第一あの人はいつもめちゃくちゃなんだから。
 今日だって、会社のセキュリティーが復旧してないのに・・・・・・)

「あ・・・・・・会社」

 トランクスの顔がカプセルコーポレーションの方角に向いた。

(すぐそこだし、見回りに行くか・・・・・・)

 トランクスは方向を変えて、カプセルコーポレーションのある通りに出た。すぐ向かいが、カプセルコーポレーションの正門玄関だ。
 そこでトランクスは目を見張って、思わず物かげに隠れた。
 用心深くあたりをうかがいながら、玄関に消える人物がいる。
 細いシルエットは、女性のものだ。

 それにこの気は・・・・・・。

「・・・・・・」

 



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