ADB〜地脈の魔物〜小説A
小話〜C.C.事情〜非戦闘員、社内の平和を守ります!
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 ルンルンが、孤児院の運営報告書を届けにカプセルコーポレーションに足を運ぶと、オフィス案内のところに一風変わった老人がいた。
 
 品のよい紳士服に、おそろいの紳士帽をかぶっている。
 体型は小柄の細身。
 そこまでダンディに決めているのに、一瞬見えた横顔には派手なサングラスが着用されている。

 その不思議な出で立ちに、ルンルンはかた眉を上げた。

 応対している受付嬢にまじって、イラータまで、困った愛想笑いを浮かべている。

 話しかけるべきか・・・・・・。素通りしていくか・・・・・・。うーん・・・・・・。

 悩んだすえ、ルンルンは片手をあげた。

「よお、どうしたの?」
「あ、ルンルンさん! 」

 イラータの表情がぱっと華やぐ。
 と同時に、老人が「じゃから、ここの社長とは知り合いだと言っとるだろうが!」と怒った。

 しかし、受付嬢も負けてはいない。
「知り合いでも何でも、アポがなければ、社長との面会はできかねます!」

 きっと長いこともめていたんだろう。受付嬢の応対も慇懃無礼になっている。

「大変そうだな・・・・・・」
「そうなの。さっきからずっとあんな感じで」

 イラータが肩をすくめると、ルンルンは小柄な老人の横にしゃがみこんだ。

「わりぃなじいさん。もし伝言があるなら、わたしが伝えようか? これから社長と会う予定なんだ。知り合いなら名前を言えば、来るかもしれねーぞ?」

 小柄な老人がルンルンに顔を向け、だまりこんだ。
「うーむ」とうなりながら、頬を赤らめ、急に姿勢をただす。

「お嬢さん。ちょっとこの老いぼれの冥土の土産に、おっぱいをツンツンさせてくれんかの? ぱふぱふでもいいんじゃが」
「・・・・・・」

 ルンルンはタンクトップからあらわになった、豊満な谷間を見てから、老人に目を戻した。

「スケベなじいさんだな。まったく、せっかく人が親切にしてやったのに、やーめた」

 ルンルンが立ち上がりきびすを返すと、背後から「けちっ」と老人が言う。

 けちもへったくれもあるか! とつっこみを入れようとするより早く、老人がルンルンの尻をつついた。

 思考より先にルンルンの防衛本能が反応する。

「このっ!」

 体をひねり、回し蹴りを入れたが、手応えなく空を切った。間髪入れず、打ち込んだ拳もあたらない。

「なっ・・・・・・!」
 ルンルンが言葉をもらすと、老人はカウンターの上であごひげをなでていた。

「筋は良いがまだまだじゃのう、お嬢さん」
 
 なんて言ってから、鼻の下をのばし、指をわしわしとエロっぽく動かした。

「このっ! じじい!」

 ルンルンは報告書をイラータに押しつけると、老人に殴りかかった。
 受付嬢が悲鳴を上げて、カウンターから散る。
 カウンターを乗り越えたルンルンは、老人の背後をとって、拳を叩きこんだ。でも当たらない。
 それどころか老人は、ルンルンのふところに、入る。

「ほい!」とゆるいかけ声とともに、ルンルンの胸がわしづかみにされた。

 
 ******


『うわあああああ!』

 会社中にとりつけられた拡声器から、女性の悲鳴が炸裂した。
 会議中だったトランクスは飛び上がって、拡声器を見上げる。

『なにしやがる! このくそじじい! ひっ! ちょっ! やめろ・・・・・・っ! あっ・・・・・・! 』

 流れる声の主はまぎれもなくルンルンだ。おまけに声がどんどんあやしく、悩ましく変わっていく。

(な、なんだ?)

 トランクスは立ち上がると、「すみません。席を外します」と言って、会議室を飛び出した。

 
 ******


 ルンルンがどれだけ攻撃をしかけても、まったくあたらない。あたらないどころか、ひょいとよけられ、そのたびに、胸をもまれたり、ツンツンされる。

 自分の体を有益のために利用した経験は多々あるけれど、それはこっちが優位である確信があったからで・・・・・・。

 このスケベなじいさんと自分の実力の差は、圧巻だ。
 ルンルンは恐怖をおぼえた。
純粋にとめどなく強いトランクスとはちがう、老人の煩悩に震える。

 どんどん壁へ追い込まれ、ついにルンルンの体制が完全にくずれた。
 老人のサングラスがキラリ光る。

「ぬおおお! もらったああ!」

 迫る老人に、ルンルンは思わず、自分の体を抱き込んだ。

・・・・・・その時、誰かがルンルンのうでをグイッと引き寄せた。

 老人は「ぬおおお!?」とその場を通過し、オフィスの壁に正面衝突する。

「何をなさっているんですか! 武天老師様!」
「おう、トランクス。久しぶりじゃのう! 遊びに来てやったぞい!」

 鼻血を出しながら、老人が手をあげる。

 余裕なじいさんの元に、「あーんーたーああ!」とすさまじい殺気を帯びたブルマがやってきた。

「うちの社員になにしてんのよ! このスケベじいさんがぁぁぁぁ!」

 そう言って放たれたブルマの平手うちがあっさりと老人の頬をとらえ、えぐった。

 トランクスはルンルンの肩を抱いたまま、カウンターのアナウンスの電源を切った。
 おそらくさっきの乱闘のさいに、スイッチが入ってしまったのだろう。

「ルンルンさん、大丈夫ですか?」
「・・・・・・最悪に決まってるんだろ。 誰だよ、あのスケベじじいは!」

 息が乱れて、冷静沈着な彼女がめずらしくあれている。トランクスは苦笑いした。

「以前お話した、孫悟空さんの師匠さんです。武術の達人で、俺も世話になったことがあります」

「道理で、蹴りもパンチも当たらないわけだ・・・・・・」

 でもどういうわけか、ブルマのビンタや蹴りは利いている。
 
「母さんの攻撃は武術とは、関係ありませんから」

 トランクスが、疑問はわかっていると言わんばかりに説明した。

「そんな理由?」

 トランクスとルンルンが傍観していると、脇に控えていたイラータがふらり、ふらりと、やってきた。
ルンルンに運営報告書を乱暴に押しつける。
 イラータにしてはめずらしく荒々しい、仕草だ。

「お、おい、イラータ?」

 様子がおかしいイラータを案じて、ルンルンが話しかけるが、耳に届いていないらしい。

 イラータは無言のまま老人のところへ歩いていくと、怒りで潤んだ目で老人をにらんだ。

「ルンルンさんになんてことするのっ!? さいってー!  ばかっ! ばかっ! ばかっ! ばかぁぁぁぁ!」と老人にビンタを食らわす。
 しかも、往復だ。

 老人は「ぐはっ」とか「ぐへっ」と言いながら、白目をむいて、気絶した。

「・・・・・・カプセルコーポレーションで最強なのって、おまえじゃなくて、あのふたりかもな」
「は、ははは・・・・・・」

 老人が気絶してもなお荒れ狂うブルマとイラータ。
 ふたりをあやすのに、小一時間の労力を使う羽目となった。
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