1/11ページ目 待ちに待ったかはあまり定かでないが、土曜日の昼下がり、綾瀬と萌は例のホラー映画大会を開催しようとしていた。 ドキドキが止まらない萌は妙に大人しく、ちらちらと彼女の様子を窺う綾瀬も何を話しかけたらよいのかわからず妙に大人しい。 ふたりの間には妙な沈黙が、続いている。 綾瀬はこの日初めて、自分のオススメ作品を萌と観るのではなく、ネットで評判が高かった作品を萌と一緒に観てみようという試みをしていた。 よって、大まかなあらすじについては知っていたが、詳しい物語の運びについては知らなかった。 部屋はカーテンを引いて薄暗くしてあり、ふたりして黙っていると非常に気まずい。 なので映画を観始めたら盛り上がるかなと思った綾瀬は、いそいそと上映を開始した。 何の合図もなく始まりビクッとした萌も、画面に顔を向けてとりあえずホラー映画を楽しもうとした。 すると、冒頭でいきなり、若い男女のカップル(かはわからない)のセックスシーンが来た。 前戯でもなく挿入済みで、かなり過激なところから始まったのである。 じつは綾瀬は下調べ不足だったのだが、萌と一緒に鑑賞しようとしていた作品のうち全部の作品がエロティック・ホラーとなっていた。 一番目に持ってきた作品はかろうじて15歳未満は観られないやつで、18歳未満となると萌はまだ鑑賞不可の作品だった。 「ええええええええ!?」 「ひぇぇえええええ……!」 ふたり同時に奇声を上げて、綾瀬は直ちに映像を停止する。 情事に没頭していた男女が恐いおじさんみたいなのに襲われるシーンに到達することなく、綾瀬と萌はただのセックスシーンだけを観てしまった。 「ごめん、萌ぴょん!わざとじゃないんだ!」 「ほっ、ホラーより……恐かった……」 言い訳をする綾瀬と、ゾンビよりAV男優のが恐かったと言った綾瀬と感性が似ている萌はやはりお似合いに思える。 「……萌ぴょん、ああいうの観るの初めて?」 「まだ15歳ですから……」 恐る恐る、綾瀬は探りを入れて、萌は健全アピールをする。 これは確実に、ふたり揃ってウブとなっている。 「家でたまにドラマとか観てて、キスシーンが来るだけで気まずくなっちゃうもん……」 「ああ、それすっごいわかる……逃げ出したいのに逃げるのも気まずいっていう、あれだよね……」 「うん、そう……」 ホラー映画にわりとありがちなセックスシーンのおかげで、沈黙は解消された。 萌は自分なりに色々と妄想することならあったが、実際にあれこれを観るのはまだしていなかった、規制を守ってはいたので。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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