1/11ページ目 居酒屋にて、一悶着は奇跡的な終息を迎えた日の、次の日の夜。 (きっ……気まずい!) 真依は彼のマンションのリビングのソファにて、ただならぬ緊張感を漂わせていた。 隣には図々しくも、屡薇が座っているというかここはそもそも彼の部屋なのです。 自分から誘った真依はきちんと、彼の部屋にお邪魔をしていた。 ドタキャンのことも第一に考えてみたが、やっぱり会いたいのでそこは素直に諦めた。 彼のほうは“気まずい”とはこれっぽっちも感じていない様子で、アホみたいな顔をして呑気にテレビを観ている(※真依ビジョン)。 「真依さんてけっこうドラマ観んの?」 「えっ?あ、うん、まあ……たぶん……」 今ふたりは、真依が毎回欠かさず観ているというドラマをリアルタイムで鑑賞している最中だった。 じつのところ真依は特に毎回観ているドラマではなかったのだけど、なんか気まずかったので適当にドラマ鑑賞を提案してみただけだった。 幸いなことに内容はムードを盛り上げてくれるような恋愛ものではなく、刑事ものとなっている。 それでもドキドキしすぎて、返事は曖昧になっている。 「そっかあ、真依さんがドラマ好きなら俺ももっと観ようかな。」 彼女と会話を弾ませるためか、ぽつりと口にした屡薇は麦茶を飲んだ。 アルコールに手を出していないのが憎くもあり、真依はちょっとその余裕綽々っぷりはひっ叩きたくなってくる。 「他にも色々観てんの?」 「うん、まあ……たぶん……」 よって、彼のことしか考えていない彼女は、ドラマの追求をしようとした彼への返事も曖昧なままだった。 緊張が半端なく、答えを考えていられる余裕など毛頭ない。 自分にはこんなにも余裕がないのに彼にはじゅうぶんな余裕があるように見えるのが、憎たらしかった。 真依にもグラスに入った麦茶が出されているけれど、全然減っていない。 「あ、ごめん。俺うるさかったね?」 真剣に視聴をしているのだと勘違いした屡薇は、苦笑しながら謝った。 「うん、まあ……たぶん……」 真依の返事は心ここにあらずのせいで一貫しており、彼はそれこそが真剣の賜物だとまたしても勘違いをする。 屡薇はだいたい犯人の目星がついているが、真依はストーリーすらよくわかっていなかった。 ドラマを観終えたら何をすればいいのか、そんなことばかり考えてしまいそわそわしている。 そわそわする時間をわざわざ作り出したのは自分なのに、真依はもどかしい気持ちがして焦れてしまっていた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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