※※第311話:Make Love(&React).189
1/11ページ目















 (うーん……思い出せない……)
 ナナは眉間にしわを寄せて、悩んでいた。
 昨日見た夢の内容を事細かに思い出そうとしているのだが、生憎内容はこれっぽっちも詳しく思い出せなかった。

 目覚めた瞬間に感じたあの、この上ない切なさに包まれた“薔が生きていてくれた喜び”は一体どこからくるものだったのだろう。
 実際、彼は出逢ったときからずっと、時に危うく儚くなることもありはしたけれどずっと生きている。
 それなのに、“生きていてくれたこと”に対して改めて喜びを感じるなんて、戸惑わずにはいられなかった。


 ソファに座り、腕組みをして悩むナナは只今、夏休みの宿題をしている真っ最中だった。



 「おまえをそんなに悩ませてんのはどの問題だ?」
 「わあっ!びっくりした、いきなりかっこいいお声を出さないでくださいよ!」
 「……断ってから出すにしてもいきなりには変わりねぇだろ。」
 「それもそうです!」
 キッチンから戻ってきた薔は彼女に優しく声を掛けたところ、めちゃくちゃびっくりされてちょっと不機嫌になった。
 一緒にいるのだから、いきなり声を掛けることなんて日常茶飯事、というより彼の得意技だ。
 あと、出すのも、色んな意味で得意技ですね。
 断ってからとかいっさい関係ないやつですね。


 「まあ、かなり悩んでるようだしな、息抜きでもしろよ。」
 「えっ……?」
 よくよく見てみなくとも彼は一枚の大きな白いプレートを手にしており、彼女の目の前、テーブルの上に優雅な手つきで置いた。
 プレートには綺麗に重なったパンケーキが、ホイップとバニラアイスで可愛らしい白地の服を着て、ラズベリーとブラックベリーとブルーベリーの模様でお洒落をしていた。
 至って簡単に彼は作っただけです。


 「すごぉお!もんのすんごく、美味しそうではないですか!薔はいいお嫁さん」
 「をもらうのは知ってる。」
 感心ひとしきりのナナは思わず“薔はいいお嫁さんになりますよ”と口にしようとして、遮った彼が上手くまとめた。
 きっぱりと言われたナナは照れて真っ赤になっているなか、薔はテーブルの横側のクッションに座る。
 否応なしに彼女のほうが、目線は上になった。



 「つうか、おまえはもう俺の嫁だろ……あと二年弱待たなきゃなんねぇのは事務的な手続きだけだ……」
 「ほおおおお!?今一瞬、フォークがナイフに見えました…!かっこいい!」
 パンケーキに添えてきたフォークを手にした薔は鋭く光らせ、彼の狂気に魅せられたナナはばか正直に感嘆した。
 リビングには甘やかな匂いがしている。

[指定ページを開く]

次n→ 

<<重要なお知らせ>>

@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
@peps!・Chip!!は、2024年5月末をもってサービスを終了させていただきます。
詳しくは
@peps!サービス終了のお知らせ
Chip!!サービス終了のお知らせ
をご確認ください。



[ホムペ作成][新着記事]
[編集]

無料ホームページ作成は@peps!
無料ホムペ素材も超充実ァ