※※第271話:Make Love(&Implement).165
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 「試しに今ぁ、ナナちゃぁんを中心にした世界をぉ、写生してみてもいいんだけどぉぉ。」
 「すごいね、こけしちゃん!やってみて!」
 シャープペンを目の前で立てたこけしちゃんは、さっさっと切り取った景色を写生して見せようとした。
 ナナが中心になった場合、攻守についてが非常に気になるところではある。

 しかしながら、こけしちゃんはとんでもないことに気づいてしまった。

 「あぁぁっ、あたしったらぁぁっ……」
 いきなり机に伏したこけしちゃんは、何かをものすごく恥じらっているように見える。
 試しにとか中心とか世界とか写生、しゃせいとか……何もおかしなことは言っていないんだけどな。

 「どうしたの!?こけしちゃん、大丈夫!?」
 口走った写生に項垂れている親友へと、ナナは心配そうな声を掛けた。
 「ごめんねぇぇ?ナナちゃぁん……昼間からR指定だったぁぁ……お願いだからぁ、今はそっとしておいてぇぇ……」
 「どういうこと!?」
 ただただ恥ずかしがるこけしちゃんと、慌てるナナ。

 (いやあの、普通にそっちの写生だってわかるよ……)
 近くで聞いていた者たちは、心で的確なツッコミを入れた。
 むしろそこで恥ずかしがられると、R指定のほうで捉えてしまう。




 とにかく写生に悶えるこけしちゃんを、そっとすることもせずナナが心配していると、

 「おい、教科書には落書きすんなよ。」

 いきなり教科書が奪い上げられた。


 「あっ!いらしてたんですか!?」
 「家に見えるっつうことは家以外の何かだな、何が描いてあんだ?これ、」
 奪い上げた教科書を薔はまじまじと眺め、やはり彼にも家に見えているようだった。
 こけしちゃんにはようやく、そっとしておいてもらえる時間が与えられる。

 「ピノ太くんさんです!」
 「……あ?」
 家と言われたナナは声を張り上げ、まさかのキャラクター(キャラクターと言えども生命あるもの)だった薔は思わず教科書を閉じた。
 見つめられたナナはドキドキしてしまい、羨ましい……とうっとりする周りの皆さんは、なぜ国民的アニメのキャラが家になってしまったのかよくわからない。


 「“窓が前衛的な家”っつうことには、ならねぇのか?」
 「なりませんよ、ピノ太くんさんを描いたんですもん!」
 薔は笑いを堪えながら確かめ、ナナは譲らない。
 絵心はどうであれ、ピノ太くんを描いたことに間違いはない、例えそれが結果的に家になろうとも。

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