1/15ページ目 傷つけないよう、這わすくちびるで、 傷つけたいと願う。 壊さないよう、触れるゆびさきで、 壊したいと望む。 沈めば嘆く、心が。 『愛するほど、恐ろしい衝動に駆られてゆく』 「こけしちゃん先生……わたしに絵の描き方を教えてください……」 あと数日で夏休みになる月曜日の休み時間に、思い切ってナナは親友へと懇願した。 「絵の描き方ぁぁ?」 漫画まで手掛けてしまうほどの画力を持っているこけしちゃんは、急にきたお願いにキョトォォンとしている。 「わたし、絵が下手すぎて困ってるんだよ……これが今の授業中に描いてみたピノ太くんさん。」 「うぅぅむぅぅ……」 ナナはまたしても授業中、授業には集中していなかったようで、こけしちゃんに己の絵心のレベルを確かめてもらうために教科書(←教科書)に描いたピノ太くんの落書きを見せた。 見せられたとたんにこけしちゃんはニコニコと唸る、教科書に描かれているのはどう見ても立派な一軒家だった。 小学生がもはや、建築物になりました。 「これはナナちゃぁん、下手ってわけではないと思うぅぅ……」 「えっ!?ほんとうに!?」 彼氏をウーパールーパーに描かれたことを知る由もないこけしちゃんは、ここまでの域に達しているのであれば下手ともまた違うように思えてならなかった。 さすがは、ナナ画伯です。 と言うより正直なところは、ここまでのレベルにきてしまっているとこけしちゃんにとってもお手上げだった。 見たまんまのものを描かせる術を身に付けさせるだけで、100年はかかりそうである。 「それにぃ、あたしが教えるとぉぉ、どうしても攻守がねぇ……出ちゃうからぁぁ……」 「はい?」 にっこにこのこけしちゃんはやんわりと断るためにも、自分は絵の先生には適していないことを説明しだした。 描くものはだいたい、己の腐的な欲求を満たすために、白いあの美しいお花の世界に変換してしまうのがこけしちゃんだった。 「ゾーラ先生ぇを描いた場合はぁ、これぞ攻めぇぇってことを前提に描いてるからぁ、どうしても鬼畜っぽくなっちゃったりするのぉぉ。」 「きちく…?なんかおせんべいの名前みたいだね。」 「そんなおせんべいないよぉぉ?」 「そうなんだね!」 例えとして彼氏を引っ張りだしてきたこけしちゃんは、危うく勝手なイメージだけでおせんべいにまでされるところだった。 説明の内容はよくわかっていないナナだが、きちくがおせんべいではないということだけでなんとなく納得した。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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