※※第304話:Make Love(&Sex aid).38
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 「……昨夜、危うく人を轢き殺しそうになった……」
 前をしっかりと見据え、醐留権は低く男前な声で告げた。
 こけしちゃんだったら確実に感じちゃうような声で。
 「えっ!?」
 ガチなやつ!?と思った屡薇は、やや身構える。

 「いや、正確に言うと変な生き物を轢き殺しそうになったのだが……いきなり車の前に飛び出してきたときは殺意すら芽生えたよ……」
 「えぇぇぇえ…?そのタイミングで殺意芽生えたのに轢き殺さなかったの…?」
 重々しいトーンで話すゾーラ先生に対して、屡薇のツッコミどころは間違っているような気がしてならない。
 というか、それ以前に殺意の芽生えたタイミングが間違っている。


 「しかも彼は、道路に白猫がうずくまっているのを助けようとしたらしいのだが、道路にはただ白みがかった岩が落ちていただけなんだ……」
 的外れなツッコミをスルーした醐留権は、苦虫を噛みつぶしたように口にした。
 「えぇぇぇぇえええ!?そいつ意外といい奴なんじゃね!?」
 岩が道路に落ちているとか、たちの悪すぎる悪戯の可能性もあるため、勘違いのおかげで逆に命拾いしたのではないかと察知した屡薇は感心した。
 愚痴をこぼしているのに感心されたゾーラ先生はだんだんと、金髪のつむじへとクラブを振り落としたくなってくる。
 二人とも、ゴルフクラブの使い方からまず、学習し直して来よう。


 「事故らなくて済んだじゃん、良かったね!?ゴルちゃん!」
 「良いわけがあるか。」
 「何で?」
 屡薇は互いのテンションを上げようとしたところ、キリッとした表情で跳ね返された。
 ゴルちゃん呼びについては特に咎められなくなった。


 そして醐留権は、衝撃の展開を暴露した。

 「しつこく謝られたので鬱陶しくなり許してしまったら、今朝がた……屋敷の門前に設置してある全ての防犯カメラに彼の姿が映っていた……」

 と。
 必死になってあとをつけてきたのかな。




 「怖ぁあ!ストーカーじゃん!」
 ここにきて屡薇は思い切り、醐留権先生に同情した。
 門前にいくつも防犯カメラを設置できるという、お金持ちな部分には寸分も同情できなくとも。

 ストーカーだけはどうしても、いただけないし許せない。




 「前髪がやたらと長く、ぞっとするほど気持ちの悪い男だ。」
 「うわああ……俺が今いっちばん嫌いな奴と、見た目だだ被りだわ……」
 ゾーラ先生の説明に本気でぞっとした屡薇は、長すぎる前髪はトレンドなのかとちょっと考えてみたりした。
 自分が今いっちばん嫌いな奴と同一人物なのではないかという考えには、残念ながら辿り着けていない。

 「帰宅してもまだいるようなら、鉄槌を食らわせたいと思っている。」
 「鉄槌食らわせてぇなら打ちっぱなしとか止めて早く帰ったほうがよくね?」
 「それもそうだな。」
 やがて醐留権は、助言をもらったこともありゴルフの打ちっぱなしは切り上げて帰ることにした。
 鉄槌はジョージの晩ごはんに負ける結果となるのだが。

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