※※第304話:Make Love(&Sex aid).38
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 白いゴルフボールが、目に見えないくらいだからこそ美しい速さで飛んでいった。
 ゾーラ先生は特にゴルフが趣味とかではないが、最近になって打ちっぱなしはなかなかのストレス解消になることに気づいた。

 今日は全力で空腹を回避したかった羚亜はベンツの車内でコンビニのお弁当を食べてきたためかなり怒られたものの、満腹になってベンチでうとうとしている。
 醐留権のゴルフにはいっさいの興味を示しておらず、れっきとしたヴァンパイアなので自分の身は自分で守れることもあり(※ただし彼女からは絶対に守れない)、羚亜はそろそろ迎えは遠慮して歩いて帰りたかった。




 「わーお、ゴルちゃん、ナイスショット。」
 ボールの飛んでいくほうを見ていた屡薇は隣の打席から、陽気な声を掛けた。
 隅から隅まで絶好調もいいところでできることならバッティングセンターでバットを振りたかったのだが、ちょうど帰り道にゴルフの練習場があったのでクラブを振っていた。

 「ゴルちゃんは止めてくれないか?」
 ナイスショットと言われたにも拘わらずイラッとした醐留権先生は、眼鏡をくいっとさせて隣の金髪をたしなめる。
 呼び方は“要先生”で落ち着いたはずが、なぜよりによって“ゴルちゃん”になってしまったのか。
 「だって醐留権先生なら、ゴルちゃんでいいじゃん。」
 あっけらかんとした顔で屡薇もナイスショットを放つ。
 でもゾーラ先生は断じて、褒めてなどあげない。
 ゴルフの打ちっぱなしをしているからではなく、無論、名字から取った上での“ゴルちゃん”でした。


 ここにそれぞれの彼女がいたら大はしゃぎ間違いなしの、攻めと攻めの仲睦まじい光景が生まれている。




 「まあ、君より変な生き物はこの世にごまんといる。こればっかりは仕方あるまい……」
 「ちょっ……ゴルちゃん、俺を傷つけながらさらっと溜め息つかないでくれる?」
 醐留権にはストレス解消に来ているはずがどっと疲れが押し寄せて、普通に酷いことを言われた屡薇はクラブで眼鏡を振り落としたくなった。
 トレードマークが眼鏡だと度々、ピンポイントで狙われる。

 にしても屡薇は、ゴルちゃん呼びをめげない。



 「つうかその様子だと、何かあったの?地球外生命体にでも遭遇した?」
 このときふと、ゴルちゃんは変な生き物に対して悟りの境地にすら入りかけている気がした屡薇は手を休めて、尋ねた。
 酷いことを言われたあとの対応にしては、優しい。

 「地球外生命体とはおそらく違うのだが、私の不気味な体験談を聞いてくれるか?」
 「うん。聞くつもりで声掛けてるし。」
 神妙な面持ちとなった醐留権先生は話す気はけっこうあるようで、ゴルフ練習場にて真夏(この物語はまだ夏休み中)の怪談?はひっそりと幕を上げた。
 羚亜はすでに熟睡の域に達していた。

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