1/11ページ目 「ちょっと真依さん、離れて歩こうとしちゃダメだってば!」 前回から引き続いての夜、屡薇は度々必死になって彼女を追いかけていた。 本日の彼はどこをどう見ても、不審者には見えない。 夏場なので爽やかな格好をした、ただのイケメンである。 「ついてこないでよーっ!」 ひたすら拒否したがっている真依は昨夜とは違い、彼がかっこいいためにツンの部分をぞんぶんに発揮しているだけだった。 一緒に帰るのが恥ずかしすぎるだけなのだが、端からはカップルがイチャイチャしているようにしか見えない。 ふたりとも目的はストーカー退治だと言うのに、彼女は逃げるし彼氏はかっこいいしで、心持ちはストーカー退治どころではなかった。 「これじゃまるで、俺がストーカーしてるみたいじゃん!」 「その考えをどうして昨日は持てなかったのーっ!?」 屡薇は薔にアドバイス(?)をもらえたおかげでせっかく怪しくない服装できたのに彼女に逃げられて戸惑い、真依のほうはやはり自分の彼氏はアホなのだと確信しつつも内心はめちゃくちゃ照れている。 ほんとうに、カップルがただイチャイチャしているようにしか端からは見えていない、実際に間違いなくその通りでもある。 「ねっ、手ぇ繋いで歩こうよ!てか危ねぇから繋がせろ!」 「やだっ!屡薇くんが俺様だと受けの薔さんとキャラが被るからやだあ!」 「何それ!?」 屡薇は無理矢理にでも彼女と手を繋ごうとした直後、彼にとっては意味不明な理由で嫌がられ思わず歩道から車道に向かって身を投げそうになった。 真依は本当のところはキュンキュンしていても、あっちの世界を引き寄せてくることで何とか踏ん張っている(彼はおかげさまで轢かれそうだったけど)。 ただただふたりは、イチャイチャしております。 「真依さん……頼むから俺を困らせないでよ……」 捨てられた子犬のような困り顔で彼女を見つめた屡薇は、最初振り払われようが何だろうがとにかく手を繋ごうと試みた。 見つめられた真依は、可愛い!となってしまい手を退かすことを忘れている。 このまま上手く、ふたりの手は重なるかと思われた瞬間、 ドンッ――――――…! 屡薇の背中に、“何か”が押し当てられた。 「えっ……?」 屡薇は背中を走り抜けた感覚に、呆然とし、 「……屡薇、くん……?」 真依は青ざめる。 彼の背中には、ふるえる綾瀬が顔をうずめている。 退治すべきストーカーがいよいよ登場した、けれどふたりはストーカーのことを忘れかけていたため果てなく戸惑っていた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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