※※第300話:Make Love(&Sweetness).182
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 「薔っ、お願いがあります!」
 宿題の最中、終えてから申し出ようと思っていたナナだったがついに我慢できなくなり、シャープペンを置くと隣に座っている彼の服をくいくいと引っ張りながらお願いとやらをしていた。

 「こけしちゃんからメールで教えてもらったんですが、今、夏休みなのでザザえもんの新しい映画がやっているそうなんですよ!」

 と。
 お願いのつもりが、ただの報告になっている気がしてならない。



 「……で?」
 お願いを引き出すべく、またしてもでこぼこに登場された薔だが落ち着きはらってたった一文字で返した。
 彼女はずっとくいくいと服を引っ張っている。
 ただ触っていたいだけかもしれない。

 「薔は観に行きたくないんですか!?」
 ナナはまだ告げてもいないお願いに対して、彼の同意を求めようとした。
 「俺は正直なとこを言うと、あんま観に行きたくねぇがナナと一緒なら行く。」
 まだお願いがこないために、若干呆れつつも可愛いなと思った薔は正直なところを答えてあげた。
 “ナナと一緒なら行く”のあたりの、言い方に萌えたナナはそのまま危うく、力任せに彼の服を引っ張りながら後ろのめりにぶっ倒れてしまうところだった。
 けれどあわよくば自ら押し倒されることは、何とか踏みとどまった。


 「でしたら一緒に行きましょうよ!そもそも、薔はいつもわたしと一緒じゃないと映画観に行かないですよね!?」
 「当たり前だろ、何のための映画鑑賞だと思ってんだ?」
 「映画を観るためではないんですか?」
 「ふたりの時間を楽しむために決まってんだろうが。」
 「ほおおお!その通りです!」
 映画を観るためで間違ってはいないと思いますが、そこらへんも含めてふたりの時間を楽しむと言いますことで。
 感心ひとしきりのナナは一瞬、ザザえもんを忘却した。

 その前に、お願いについてをすっかり忘却しているナナは要するに、「一緒にザザえもんの映画が観に行きたい」と申し出たかったのだろう。




 「じゃあ、明日はデートにするか。」
 スマホ(←りんごのほう)でさっそく上映時間を調べてみた薔は、嬉しい提案をしてくれた。
 「やったあ!ありがとうございます!」
 喜び勇んだナナは思い切り、彼の服を引っ張った。

 「わあっ!びっくりした!わたし今、薔のお洋服いっぱい触ってましたよね!?」
 「破きてぇのかとも思ったがすげえ可愛かったぞ?」
 「えええ!?」
 めちゃくちゃ引っ張ったあとに、自分で驚いて真っ赤になり手を離した。
 薔は楽しそうに笑って、恥ずかしがっている彼女の写真を撮る。


 「あーっ!ずるいですーっ!」
 「狡いことさせたがるおまえが悪い。」
 「えええええ!?」
 ナナもこうなったら負けじと写真を撮らせてもらおうと、携帯電話(ヒロインはフィーチャーだよ)を探していると、

 ふたりのイチャイチャを特に邪魔するつもりではなかったのだけど結果的に邪魔するかたちとなった、インターホンが鳴り響いた。

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