2/11ページ目 「ダメだ、俺いちおう真依さんのボディーガードだから目立たないようにと思って全体的に黒っぽくしてみたんだけど……暑い、この格好……」 そのうちに、屡薇は夏の夜の帰り道なので肌をほとんど露出させていない格好の蒸し暑さに堪えられなくなってきたようだ。 目立たないようにと努めた格好が余計に目立ってしまうのも、アホな彼氏のなせるわざでございます。 「うん、見てるこっちも暑苦しいもん……ていうか見苦しい……」 呆れた真依はツン関係なく素直に指摘をしてあげて、彼から少し離れて歩こうとした。 ふたりとも気ががりが他にあり、退治すべきストーカーが背後にいるというのにちっとも気づいていない。 「待ってよ真依さん、これ持ってて?」 「ええっ!?ようやく外してくれるの!?」 離れて歩こうとした彼女は外したサングラスを手渡され、とたんに喜んだ。 怪しくない風貌になった彼となら是非とも一緒に帰りたい。 「あー、汗すげぇわ……」 夜風に髪を揺らした屡薇はハットもマスクも外し、汗ばんだ姿で一息ついた。 さっきまで変人だったのにいきなりかっこよくなって、サングラスを握りしめた真依はキュンとしてしまった。 「ジャケットも脱いでいいかな?」 「うん!脱ぎなよ、それもすごく変だもん!」 屡薇は控えめに尋ね、真依は輝く瞳で答える。 「俺けっこう気ぃ遣ったんだけど、そんなに変?これ……」 「要らない気は遣わなくていいよ!屡薇くん気遣い下手だもん!夏だからものすごーく変だよ!?」 「マジかーっ!急に恥ずかしくなってきた!あと俺、気遣いはたぶん上手!」 「屡薇くん、それが正常な感覚だよ、気遣いについてはちょっとおかしいけど!」 結果的に黒革のジャケットも彼は脱いでくれたため、真依は夏の暑さにこのときばかりは感謝した。 季節感のない服装をしていると職務質問をされる確率が高いとか何とか。 ふたりの様子はもう、ただイチャイチャしているだけにしか見えなくなっている。 要するに、カップルの雰囲気をぞんぶんに醸し出していた。 綾瀬は開いた口が塞がらなくなり、110番をしているどころじゃなくなった。 屡薇は“目立たないように”の目的で全身が極力黒く隠れるような格好をしていたが、“バレないように”は目的としていない。 しかしながら綾瀬は、屡薇のバンドのファンでもある。 (高良先輩が屡薇とイチャイチャしてる…!?どういうこと…!?) 頭の中が混乱した綾瀬はとりあえず、一番最近つけたスマホのデコレーションをひんむしった。 手が勝手に動いてやってしまったが、帰ってからさめざめと泣きはする。 (う、羨ましい…!) やがて綾瀬は心の中で、羨望の雄叫びを上げた。 (僕も屡薇と知り合いになりたいよ――――――――っ!) …………そっちか! <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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