2/11ページ目 そしてお絵かき対決は始まり、ふたりの描き方には明確な違いがあった。 薔はちゃんとモデルを見ながらありのままに写し取っているなか、ナナはまったくモデルのほうを見ずひたすらノートにペンを走らせていたのだ。 目の前にモデルがいるというのに。 「あーっ!ずるいですーっ!」 「……あ?」 そのうちにさすがのナナでも、これでは圧倒的に不利だと思えた様子だ。 薔は特にずるいことをしてはいないだろう、今回だけは。 「見ながら描くのは反則ですよ!」 「だったら最初に言っとけよ。ったく……可愛いな。」 「ええっ!?」 反則と責めているにも拘わらず可愛いで返されたナナはドキッとしすぎて、ノートとシャープペンを後方に放ってしまった。 「何やってんだ?」 「つい……投げてしまいました……」 放った張本人より遠い場所にいた彼が先に拾いに行き、ナナは急にもじもじし始める。 宿題も忘れてイチャイチャできているような気分になり、照れてしまったからだ(実際は気分の通りの状態にある)。 「あ、あの……すみません、大丈夫です……」 拾ってきてもらったノートとペンを手渡してもらうとき、何がだ?と思った彼を見上げながらナナは言ってしまった。 「写生……してくださっても大丈夫です……」 と。 写生、写せい、しゃせい……申し訳なさそうに言われたほうの身にもなってあげてよ、ただでさえ絶倫なんだから。 「ああああああああっ!わあっ!違いますよ!?中に出してくださいと言うことではありませんよ!?」 「安心しろ、今だったら出せる。」 「いやああ!このひとエッチすぎるよーっ!」 「おまえに言われたくねえ……」 真っ赤っかとなったナナはばか正直にとんでもない釈明を口走り、今すぐ押し倒したくなった薔だったが静かにもとの場所へ戻った。 そのあとはしばし、ふたりして無言で写生をした。 景色や事物をありのままにうつしとること、客観的描写を主とする態度に専念した。 「できました!」 「早ぇな。」 写生に於いても、中イキでいつも先にイキまくるナナが本領を発揮し、絵心抜群の彼氏より先にモデルを描ききった。 しかも、お絵かき対決なら彼の作品が出来上がるまで待っていればいいものを、できてすぐにお披露目してしまったのである。 「今度は見ながら描きましたので、ちゃんと描けたと思います!」 …………見ながら描いたという表現にしたところは、偉い。 「………………。」 彼女の絵を黙ってじっと見つめた薔は、自分も同じお題を出されているので何を描いてあるのかわかっているためか、彼女に視線を戻すときっぱりと言い放った。 「おまえの勝ちでいい。」 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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