1/11ページ目 チェックアウトは11時なため、じゅうぶんにゆっくりしていられるという日の早朝。 海の気配はなんとなく感じられるなか、たっぷりとした静けさがまだあたりを包んでいた。 (ゆっ……夢であってほしいんだけど…!) そして、起きたとたんに真依は昨夜の出来事を断片的に思い出し、ベッドのうえで悶絶していた。 隣ではぶん殴りたくなるほどぐっすりと屡薇が眠っているが、ぶん殴りたくなるのでまともに寝顔は見られない。 夢ではまず得られない生々しさをしっかりと憶えている真依は、海に向かって走り出したかった。 恥ずかしくて仕方がなかった、とは言え、酔わされたのは自分だが酔ってあんなことまでしてしまうとは迂闊だった。 ベッドの下にはプレイのために使用した猫耳としっぽ(玩具)が転がっており、そちらも極力見ないようにしている。 つまり、目のやり場に困ってもいた。 (とにかく!覚えてないってことにしよう!そうしよう!) 率先してご主人様呼びにしたことやらなんやらを、「覚えていない」で貫き通そうと心に決めた真依は、寝具に顔をうずめたままうんうんと頷いた。 彼はアホなので、簡単に通用するであろうと思っている。 しかしながら、簡単に通用させるには例え彼氏がアホと言えども、自分が努めて平常を保っていなければならない。 「……あれ?真依さん起きてたんだ、早いね?」 「ぎゃあああーっ!」 ところが真依は寝起きの屡薇に声を掛けられたとたん、思いっきり動揺してしまった。 彼女のあまりの大声に、屡薇は起きて早々ビクッとなる。 ちなみに彼は上半身裸です。 「えっ…?どうしたの?」 昨日はあんなにもデレデレでビッチだったのに……と思った屡薇はそれが全ての原因だとは気づいていない様子で、心配そうな声を掛けてきた。 深く寝具に顔をうずめている真依はチャンスだと思った、やはり彼氏がアホであることに越したことはない(そんなことはない)。 未だ部屋は薄暗いのを利用しようと思い立った真依は、小さな声で告げてみた。 「屡薇くん、この部屋……幽霊が出るみたい……」 と。 ホテルを提供している醐留権グループの傘下の会社にとってはたまったもんじゃない話である。 「マジで!?」 驚いた屡薇はすぐさま起き上がり、特に怖がってはいない声色で口にした。 「つうことは、昨日の最高可愛いビッチ真依さんを見てたのは俺だけじゃなかったのか!?」 「このバカーっ!アホーっ!」 「真依さん、幽霊って殺せると思う?」 「もう死んでるよ!」 うまく乗り切れるかと思いきや、彼はやはりアホだった。 羞恥が高まりすぎた真依はちゃっかり発見してしまったのだが、ベッドサイドのゴミ箱のまわりにはけっこうな数のコンドームの袋が散らばっていた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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