※※第290話:Make Love(&Sex aid).35
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 主に姫と地味剣士の恋愛のやりとりの場面になると、場内の皆さんは止め処ない違和感を覚えた。
 手を取り合ったり少しなら抱きしめあったりしたほうが確実に盛り上がる場面にも拘わらず、二人の間には一定の距離が保たれすぎていたからだ。

 えっ?そこはもっと近づいてもいいんじゃないの?と思われるシーンに於いても、いっこうに距離は縮まらない。

 『クリースチャン……貴方の紡ぐ素敵なお手紙の言葉に私は失神いたしました、先日は上手くご挨拶すら出来ませんでしたのに。一度手紙に書いてみてからでないと、上手に喋ることもできないようなシャイアンなお方なのですね?』
 『お、お恥ずかしながら……文章にすることだけが得意なタイプでして……あとシャイアンではないです。』
 内心では地味剣士にイライラしている姫と距離に注意を注ぎすぎてヒヤヒヤしている箕島くんは、舞台の上手と下手に立って会話を続けていると言っても過言ではない。
 おまけに距離は微塵も縮まることがない。



 今度は距離感が気になって内容が頭に入ってこない……と、観客たちがやきもきしているところで、

 事件は、起きた。









 『ロクサヌに手を出すとはもってのほかだ!今すぐ戦地に送り込んでやる!』
 えげつない伯爵ことドギッシュー(役は演劇部の男子生徒の誰か)が、つかつかと舞台に登場した。
 ドギッシュー伯爵もロクサヌ狙いで、言ってみればロクサヌ姫は誰のものかは明確すぎるため、さほど美味しくもないモテモテ状態となっている。
 このとき、会場の空気を掴めていると勘違いして調子に乗りかけていたドギッシュー伯爵は、ステージがいつもより広いこともあり大幅に距離を間違えた。

 ロクサヌ役のナナに、近づいてしまったのである。
 無論、近づくことがかろうじて許可されている距離はきちんと設けられていた。
 劇の盛り上がりよりそちらのほうが遥かに重要なので、細心の注意を常に払っていた箕島くんはたちまち顔面蒼白となった。




 「おい、」

 舞台の上手より、そら険しく殺気立った声が響き渡った。
 イケボのひとだ……と思った場内は一斉に、そちらを見やる。
 ロクサヌ姫は彼の険しさにときめきすぎて、今が劇の最中だということを忘れそうになった。


 「あっ!薔さま、まだ仮面が」
 「うるせぇな今はそれどころじゃねぇだろ、叩き割るぞ?」
 「えええええええ!?」
 舞台裏にてスタンバイしているときは邪魔くさいために仮面を外している薔は、慌てふためく部員たちを一蹴してから容赦なくステージへ戻っていった。
 丹精込めて箕島くんが作った仮面は一時、叩き割られそうになった。


 「俺のナナにそれ以上近づくんじゃねぇよ…」

 そら険しい雰囲気のまま、薔はドギッシュー伯爵の胸ぐらを掴んだ。

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