1/11ページ目 「薔っ、起きてくださいよ……今日も部活ありますよ?」 珍しくか先に起きたナナは、彼女の枕を抱きしめて眠っている彼を揺り起こしていた。 まず、早朝なため部活までにはじゅうぶんに時間があり、ナナは純粋に自分の定位置を奪っている自分の枕にやきもちを妬いていた。 「ん――――――…」 どことなく不服そうで、甘ったるい声を漏らした薔は、まだ眠たそうに目を覚ました。 「やっと起きてくださいましたか!」 起こすのに1分もかかっていないわけなのだが、5分ほど渋ったかのような感動と共にナナは彼の目覚めをお迎えした。 このままいけば、いつものパターンで枕は放り投げられるかと思いきや。 「なんでおまえ、勝手に離れてんだよ……」 寝起きの甘さを持ちつつ不機嫌になった薔は、枕をぎゅむっと抱きしめた。 (こらあああ――――――――――っっ!) あーっ、ぁーっ…(※自分の枕に対する嫉妬のエコー) 彼がさらに強く枕を抱きしめたことで、ナナのなかのジェラシーは燃え上がった。 危うく、大声に出して枕を怒るところだった。 「わたしが起きたときにはもう、枕を抱っこしてたのは薔じゃないですか!」 「おまえが起きたときに俺はまだ起きてねぇんだから、枕を抱っこしてるかどうかなん意識できるわけねぇだろ……」 「そっ、それはおっしゃる通りです……すみませんでした……」 つい声を荒らげたナナは、上手く丸め込まれた。 どのみち、枕はふたりが寝ているあいだに彼女のもとから彼のもとへと渡ったので、もう枕による単独正犯ということで。 「つうか、おはよう?ナナ…」 「あ、おはようございます、薔……」 ここでようやく、朝の挨拶を交わすと、 「抱っこしてほしいなら、来いよ。」 「ええっ!?では、抱っこしていただくために失礼いたします!」 ナナはベッドに戻り、朝の抱っこをしてもらえることになった。 爽やかな朝であることをなるべく強調すべく、抱擁ではなく抱っこという表現にしました。 薔はぽふんと枕を枕の定位置に戻し、彼女がもぞもぞとベッドに入ってくると優しく抱き寄せた。 枕さんは放り投げられる事態を免れたようです。 「なあ、今何時?」 抱っこをするとあたまをなでなでしながら、薔は悪戯っぽく確かめてきた。 「えっ?わたしのほうから時計は見られませんけど……」 抱かれていると心地がよすぎて、この上なく安らぐのに胸はドキドキと騒いで、答えたナナは躰を火照らせた。 彼を見ていると時計は、彼女からは見られない側の壁に掛けられている。 そもそも、今しがた何時なのか確認したはずなのに、彼のことしか考えられない。 「俺のほうからはおまえしか見えない…」 くすくすと笑いながら、薔は彼女をぎゅっと抱きしめていた。 眠気が吹っ飛んだのか、蕩けて眠くなったのか、わからないくらいナナは心地が良かった。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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