※※第286話:Make Love(&Blind).175
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 淡く浮かぶのか、濃く沈むのか、未来は。
 そして過去は。














 「ええっ!?お父さんも一緒に見に来るの!?やだなぁ!」
 のほほんと冷たい麦茶を飲んでいたナナは、びっくり仰天した。
 彼女が隣でいきなり大声を上げたために、さりげなく薔もちょっと驚いている。

 「いいじゃないの。薔くんとナナが濃厚にしているステージを観に行くだけなんだから。」
 濃厚、という言葉を使いたかっただけのナナ母は、このまま娘夫婦(ではまだないけど)に泊まっていってもらってもいいと思いながら歌舞伎揚げをザクザクと頬張った。
 ちなみにナナ父は愛する妻とのデート感覚で、娘の劇を観に行くつもりでいる。

 「濃厚じゃないよ、お母さん!恥ずかしいよ!」
 「いや、かなり濃厚だな。」
 「えええええええ!?そんなに濃厚でしたっけ!?」
 真っ赤になった彼女の返しをさらりと薔は訂正して、ナナはますます真っ赤になった。
 躰が火照り、冷えた麦茶がとても美味しい。

 今日はふたりして、大会の会場案内を手渡しにナナ宅を訪れていた。
 いつの間にか55インチの4Kテレビを買えた様子なのは、薔のおかげと言っても過言ではない。


 あと二日後に迫っている劇の大会には、保護者を招待しても良かった。
 ナナは薔に、夕月も招待してみたらどうかと提案しかけてから、止めた。
 夕月はF・B・Dの持ち主だと知ってしまっているから、何となく。
 彼はきっと笑って受け流すだろうけど。


 学園祭のときより内容は濃厚なものに仕上がっているのか、はたまた。




 (相変わらず美味しそうね。)
 お菓子には目がないナナ母でも、やはり目の前に果てしないイケメンがいるとそちらのほうが美味しそうでならなかった。
 捕まえたのか捕まえられたのかな我が子を改めて褒め称えたい気持ちを抑え、歌舞伎揚げをザクザクとやっている。
 ナナと薔はラブラブモード全開中で、見ているだけで微笑ましいのも美味しい。

 どちらかと言わずもがなお菓子より娘の夫(ではまだないけど)の見目麗しさを味わいながら、ナナ母が脅威のスピードで歌舞伎揚げの二袋目をバリッと開封したとき突然、ナナ宅の電話が鳴った。
 ナンバーディスプレイに変えてからずっと、着信音は『トッカータとフーガ』に設定されている。


 「うわっ!びっくりした!」
 「おい、落とすなよ?」
 どことなく悲劇の始まりっぽいメロディにナナは思わずビクッとなり、彼女の大声のほうが余裕でびっくりするので落ち着いている薔は麦茶のグラスをそっと支える。
 面倒くさそうに席を立ったナナ母は、歌舞伎揚げを手掴みで携え電話の応対に向かった。

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