※※第268話:Make Love(&Guilty).163
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 彼がとてつもなく心配をするのは、ナナにも痛いほどによくわかっていた。
 けれど、彼を昔に殺そうとしたやつと、自分はどうやら知り合いだった。
 こんなことが、許してもらえるだろうか?
 許されることなのだろうか?


 ナナは頭まで布団を被って、まあ暑苦しくはあったが(この物語は7月の中旬)、悩みに悩んでいた。
 過去の一部分を、やはり思い出してしまったように思えてならない。
 偶然見た夢ではこんなにも、悲しい懐かしさが込み上げてはこないだろう。

 「どうしよう……困った……」
 布団にくるまれてもぞもぞしながら、ナナは本音を漏らしていた。

 「薔に……会いたいよぉ……」

 と。
 自ら離れてから、まだ一時間も経ってはおりません。




 夢の内容はとても恐ろしいものだったけれど、起きてから彼にちゃんと話すべきだったかもしれないということをナナは早くも後悔し始めていた。
 あと、彼が作ってくれた美味しい朝食を食べたかった、お腹はかなり空いている。

 「でも合わせる顔がないよぉっ…!」
 ぎゅっと両手で布団を掴み、ナナはぼふっとシーツに顔をうずめた。
 ほんのり懐かしい匂いがする、これはなんだか心地よい懐かしさだ、あの夢の懐かしさは、尋常ではないほどに悲しい懐かしさだった。





 「ほんとにねえのか確かめてやるから、見せてみろ。」
 彼女が振り絞るように言葉にした直後、そら不機嫌ながらも堂々とした声が部屋には響き渡った。
 「えええええ!?わたしっ、薔に会いたすぎて薔のお声が聞こえてるよぉっ!」
 布団をごっそり被ったまま驚きのあまり、ナナは一跳ねした。
 どうやら最初はいきなりのことで、空耳だと思った様子だ。
 もしかしたら、思いたかっただけかもしれない。


 「……おまえふざけんなよ?引っ剥がすぞ?」
 「ぎゃあ!」
 雰囲気が険しくなった薔は容赦なく布団を引っ剥がし、ナナは暑苦しさから解放された。
 と同時に、無性に面映ゆくなった。

 「あああのっ!おっ、お母さんに、わたしはいないって言われませんでしたか!?」
 「一言も言われなかったな、かなり快く歓迎された。」
 「えええええええ!?」
 ナナ母は端から、いないと嘘をつく気はなかったようだ。
 もともとナナ母は、イケメンにはとことん甘い。

 「つうかおまえ、何考えてんだ?捜す前に心配のあまり俺は死ぬかと思ったぞ……」
 「申し訳ございませんでしたぁ!生きてっ、探しにきてくださってほんとうに良かったです!」
 やがて薔は彼女の目の前に座り、ナナはベッドのうえで土下座をした。
 彼はちゃんと、ふたつの鞄を手にここまで来てくれていた。

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