2/13ページ目 「え……?高良先輩、昨日のジョーばん観てないんですか?昨日のメニューは“カリフォルニア風なめろう”だったのに……」 ジョーばん、とはジョージの晩ごはんの略称のことで、運よく好きな先輩と一緒にお昼休憩に入れた綾瀬は唖然とした。 先輩もジョーばんは欠かさず観ているだろうと信じて疑わなかった気持ちを、早くも打ち砕かれた。 朝、「具合はもう大丈夫ですか?」と聞いたらあっけらかんと返された「具合なんて悪くないよ?」の一言に安堵した後の、この衝撃。 そして、カリフォルニア風なめろうってそれはもはやなめろうじゃない気がしてならない。 「ちょっ……なめろうって今ウケる……あっ、受けるって言っちゃった、あははっ……」 「はい…?」 昨夜、ニコニコの大先輩とその彼氏のやりとりを聞いていた真依は思わず、吹き出した。 綾瀬はますます唖然としている。 「ねぇねぇ、それより綾瀬くんてもしかして、お弁当全部手作り?」 「あっ、はい、ジョージを見習って全部手作りにしてます。」 ここで、綾瀬のお弁当を見て感心した様子の真依は、中身をもっとよく見ようとして急接近をした。 ドキドキの綾瀬は前髪で顔を隠そうと照れながら俯き、屡薇がこの場にいたら即刻漆黒の闇に葬られていただろう。 「すごいね、ところでジョージって誰?」 「えええええ!?高良先輩って、ジョージのこと知らないんですか!?」 「ごめんね、ぜんっぜん知らない。」 やがて真依は率直にジョージのことは微塵も知らない旨を通達し、綾瀬くんは思わず己の手作り弁当を後方へ放り投げそうになった。 ストーカーとは往々にして、どこをどうやったらそうなるとツッコミたくなるレベルの勘違いから生まれるものであるため仕方ないと言えば仕方ない。 「かなり人気のある、料理研究家のかたなんですが……」 「ふううん。」 もじもじと綾瀬が説明を始めた頃には、真依は何の興味もなさそうに自分のお弁当を食べていた。 彼氏に食べさせてあげるための試作品も含まれており、真依の弁当も手作り率が高い。 がしかし、綾瀬はその点を褒める勇気がどうしても出せなかったために、 「あれ?高良先輩ってもしかして、FeaRのファンなんですか?」 バッグについていたキーホルダーのことを、思わず尋ねていた。 「えっ!?綾瀬くん知ってるの!?」 「あっ、はい、僕こう見えてヴィジュアル系よく聞くんです……」 「そうなんだあ、ちょっと意外!」 ジョージのときはまったく食いついてこなかった真依が今度は激しく食いついてきたことで、綾瀬は手応えを感じた。 よって、この話題はもう少し広げてみようと思い、がんばってみた。 「FeaRって、作詞作曲もしてるギターの屡薇が一番かっこよくて僕は好きなんですけど、高良先輩は誰のファンなんですか?」 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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