※※第284話:Make Love(&Still).173
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 「そうだぁぁ、真依さぁん、これぇぇ。」
 特にヤンデレではないこけしちゃんはニコニコと、真依にスマホ(←りんごのほう)を返した。
 返す際にはゆびが触れあったりしないよう、なんとなく細心の注意を払っている。
 白い百合の花が咲いてしまっては困るので。

 「お願いされた通りぃ、上手いことだまくらかしておきましたんでぇぇ。」
 「ありがとうございます、先輩!」
 真依は感動して涙ぐんでまでいるが、こけしちゃんのこの至上のおっとり口調でだまくらかせるわけがないと気づくべきである。
 お願いをする前にまず気づくべきでもある。

 「ノート、もっと読ませていただいてもいいですか?」
 「どうぞどうぞぉぉ。」
 やがて真依はさらなる腐の世界を堪能したがり、こけしちゃんは快くノートを差し出した。
 己に降りかかりそうになれば白い百合の花も警戒するくせに、やはり白い薔薇の花には何の抵抗も感じないのがこけし姉さんです。
 ちなみに本日は両親とも帰りは遅い予定で、司は慎くんのお家へ一緒にお勉強をしに行っていた(姉に激しく勧められたため)。






 腐のつく乙女たちがどれだけ大騒ぎしようともベッドのど真ん中を陣取り熟睡していたゲイちゃんは、ふと、優雅に起き上がった。
 はしゃぐ乙女たちを呆れ顔で見下ろすと、ベッドを降りたゲイちゃんはとある最強のおかたを招き入れるべく玄関へと向かう。



 玄関はきちんと中から施錠がされていたが、開ける術なら心得ていた。
 目標を定めたゲイちゃんはしなやかに高くジャンプをして、見事なねこぱんちでバシンと叩き錠を外した。
 たいていのものはねこぱんちで何とかなる。
 こちらの、ゲイちゃんのねこぱんちの威力は、停車している軽自動車を数センチ動かし側溝にタイヤを嵌めさせることも可能なレベルだった。
 故に滅多にお披露目はしない。




 「あれ?誰もいない……」
 ドアを開けてもらったのだと思ったナナは、玄関に誰も立っていないことにキョトンとした。
 「いや、ここにいるぞ?」
 足元を見た薔はひょいと、ゲイちゃんを抱き上げる。
 大人しく抱き上げられたゲイちゃんは憧れの兄貴にすり寄り、ゴロゴロと喉を鳴らした。


 「か〜わいすぎる――――――――――っ!」
 彼氏が黒猫を抱っこしている姿に、ナナは大興奮。

 「黙ってついて来い。」
 「黙ってついて行くのは可愛すぎて無理ですが、どこまでも薔について行きます!」
 「おまえ……可愛いな。」
 「薔が可愛いんですよ!」
 まるでまたたびを与えられたかのようにメロメロのゲイちゃんのあたまをよしよししながら、薔は彼女と共に勝手にこけしちゃん宅へ上がり込んだ。
 もちろんふたりとも、土足ではありません。

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