1/13ページ目 「俺、こけしさん家がどこなのかを聞いたんだけどな……」 若干遠い目をして、屡薇は車窓を見やった。 薔に指示をされて走って行った場所は、こけしちゃんの家ではなく、なぜか醐留権邸だった。 要先生がすごいお金持ちなのだと知ることができた屡薇は今、ベンツの後部座席に乗せてもらいこけしちゃん宅へと向かっている。 遠回りをさせられたおかげで少し冷静になれた、真依は決して死んだりはしないと確信ができている。 ただ、こけし先輩の話によると真依はひどく思い詰めている様子で、それがとにかく気がかりだった。 粋な計らいは上手いほうへと作用しております。 「こけしさんではない、桜葉さんだ。」 いきなり訪ねられた上でベンツにまで乗せてあげているゾーラ先生は思わずイラッとして、屡薇をたしなめた。 眼鏡をくいっとやった音まで、苛ついて聞こえる。 「あ!そうだ、要先生は桜葉さんの彼氏だった!つうか俺いま、要先生はぶん殴ってもいいんだった!」 「何!?殴られたら眼鏡が割れてしまうだろう!」 かなり重要なことを思い出した屡薇もイラッとしてしまい、言い返した醐留権先生はごもっともなことを述べてはいるがそこじゃない気がしてならない。 こけしちゃんはここまで狙っていたかは定かでないが、攻めと攻めの素晴らしい調和が車内には生まれていた。 「眼鏡の心配してる場合じゃねぇよ!桜葉さんは、要先生を真依さんに渡す気なんだよ!」 運転席のシートを両手でがしっと掴みながら、屡薇は怒りの声を張り上げた。 究極の巻き添えを食らってしまったゾーラ先生は、美形キャラにも拘わらず眼鏡越しの目が点になる。 くれぐれも、事故は起こさないようにしてください。 「……は?」 「笑いながら話してる桜葉さんマジで怖かった…!要先生をなめろうにするみてぇなことまで言ってたし、もしかして病んでんの!?ヤンデレなの!?桜葉さんて!」 青ざめた屡薇は“総攻め”を“なめろう”と勘違いしたまま伝えたため、表現としてはいささか猟奇的になった。 そもそも、そうせめとなめろうはそんなに言葉の響きが似ていない。 「待ちたまえ!なめろうにされると言うことはつまり、私は桜葉に殺されるのか!?」 究極の巻き添えを食らいつづけているゾーラ先生は、なめろうという最終形態に戦慄すら覚えた。 と言うかむしろ、話の内容が全然よくわかっていない。 巻き添えを食らっているだけなので無理もない。 「えーと、どうなんだろう?要先生がなめろうにされた場合、眼鏡がなあ……ジャリジャリ言いそうだしな……」 「君の話は本当によくわからないのだが、無駄なところで妙に生々しいな……」 「アーティストだもんで。」 攻めと攻めは親睦を深めつつこけしちゃん宅へと向かっているものの、帰宅時間の頃であることから度々渋滞に巻き込まれ、到着時間は大幅に遅れそうだった。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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