2/14ページ目 「えええ!?すごい、嬉しいっ!先輩のノートを読ませていただけるんですか!?」 屡薇が顔面蒼白になっている頃、真依は憧れの大先輩と普通に長電話をしていた。 着信拒否ではなく、純粋に話し中なのでビジートーンとなっていた。 『ちなみにぃ、ナナちゃぁんの許可は得ておりますのでぇぇ、ご心配なくぅぅ。』 「さすが先輩!」 乙女たちは腐的な話題で今はじつに盛り上がっている、許可を得られていないそれぞれの彼氏にとってみればたまったもんじゃない話である。 いつものようにおっとりニコニコと話しているこけしちゃんは、後輩の様子がどこかおかしいことに気づいてはいた。 ヘタレ攻めの話題を振ったとたんに何度かテンションががた落ちしたことからして、彼氏と何かあったのだと思われる。 「はああ……先輩…、あたし心から思うんですが、浮気相手として唯一許せるのはやっぱり薔さんしかいないんですよ……」 『はいぃぃ?』 ここで、ノートに思いを馳せすぎた真依は思わず、方向をあまりにも間違えた本音を漏らした。 浮気相手と想定しているため、薔の呼び方がさんづけとなった。 こけしちゃんには何となく、読めてくる。 そもそも、浮気相手は誰一人として許しちゃダメだろう。 そういうのはこけしちゃんのノート内でのみ自由にやらせておけばいい。 『そうですねぇ、あたしもぉ、浮気相手が薔くぅんだったら唯一祝福できますねぇぇ……』 「ですよねぇぇ……」 それでもこけしちゃんはもっと詳しく引き出したいので、敢えて真依の妄想に乗った(真依はこけしちゃんに口調がつられた)。 というか実際のところ、本気で祝福できそうだった。 勝手にドロドロ展開に使われているそれぞれの彼氏にとってみれば、たまったもんじゃない話とかではもはや済まされない話である。 縊り殺される領域だよ? 『女は絶対に無理なのでぇ、あたしがヤンデレェと化してバッドエンドにしておきますぅぅ。』 「まさしくそれですよ!人気若手女優とかもう無理すぎて吐きそう……あたしもヤンデレになろうかな。ヤンデレってどういうのでしたっけ?」 『“病んでる”と“デレ”のぉ、見事な融合ですねぇぇ。』 「うわあ、よくわからない……」 ほのぼのとした会話を繰り広げることで、こけしちゃんは「人気若手女優」というキーワードの入手に成功した。 真依はあとでヤンデレもののBLを読み返してみようと思っている。 話し中でも着信履歴は残るが、もし来ていたとしても掛け直すつもりはない。 どんな話をされるのか、怖くて仕方ないからだ。 癒しを求めた真依は帰宅してすぐに、こけしちゃんに電話を掛けていた。 ひとまずは、現実逃避を必死になってはかっている。 (そう言えば、綾瀬くんがなんか、心配してくれたなあ……優しい!意外と攻めでいけるかも……) 真依はふと、思い出していた。 平然を装っていたつもりが、新人の綾瀬だけは真依の元気がないことに気づきおどおどしながらも「何かあったんですか?」と声を掛けてくれた。 無論、笑って「何もないよ」と返しただけだ。 勘の鋭さを買われ、攻めとして認定されつつある綾瀬くんにとってもこれはたまったもんじゃない話である。 他のひとならおそらく気づかない、真依に恋をしているだけなので。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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