1/14ページ目 外は暑そうにところどころ陽が照りつけていたが、迎えに来てもらった車内は涼しくて快適だった。 醐留権先生が「集合場所」と指していたのはつまるところ学校で、暑いと言えども特に迎えに来てもらう必要もないような場所だった。 よって、迎えに来てもらったというよりは勝手に迎えに来られた薔は朝からかなり、ご機嫌ななめだった。 (うんぅぅ、すごぉぉくいいムードかもぉぉ……) 空気を読めていないわけではなくきちんと読めているこけしちゃんは、助手席にて己に都合のよい妄想をおっ始める。 彼氏(※薔のこと)が不機嫌なので要先生(←正真正銘自分の彼氏)が半ば無理矢理デートに誘って、あわよくば、な妄想などなどを。 「あっ!そうだ、こけしちゃん!」 彼氏(←正真正銘薔のこと)の隣にて浮かれ気分でいたナナは急にとあることを思い出し、めくるめいちゃっていた親友に念を押した。 おそらく、ヒロインは上手い具合に空気を読めていなかった。 「今日はお風呂入るまえに胸とか揉まないようにしようね!?」 (ナナちゃぁんの無邪気さに殺されるぅぅぅぅぅぅっ…!) 正確には、そんな抽象的なものに殺されたりはしないが、ただちに妄想を止めたこけしちゃんはニコニコと戦慄を覚えた。 運転席にて一瞬、ゾーラ先生の眼鏡が白紙状態になる。 がしかし愛する彼女の命を守らなければならないため、懸命にいつも通りの眼鏡に戻した。 「もーう、ほんとうにあのときは恥ずかしかっ」 「おい、」 思い出し恥ずかしがりをしていたナナは、そら険しくも恐ろしいほどに落ち着いた声で台詞を遮られた。 外より車内のほうが燃えている(ぅぅ)と思ったこけしちゃんと醐留権先生は、矛先がこちらに向いてこないので我関せずを貫いている。 「いつの話だ?」 「えっ?いつの話でしたかね……って、近い!お顔!」 厳しく問いただされたナナは突然の急接近にときめき、余計に恥ずかしくなった。 「しょっ、薔が揉むのとはぜんっぜん違いますよ!?ふざけて揉んだだけですよ!?」 「俺が揉むように揉んでいいのは俺だけに決まってんだろうが……」 「ええっ!?そんなっ、当たり前のことをおっしゃられても困るんですけど!」 そして言い訳をしようとしたナナは結果的に墓穴を掘り、薔の雰囲気はますます厳粛になる。 たぶんこれ笑いを堪えてもいいところだな(ぁぁ)という気持ちを共有したこけしちゃんとゾーラ先生は、先ほどまでの戦慄はどこへやら目配せをして微笑んだ。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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