※※第279話:Make Love(&Turnabout).171
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 玄米茶を煎れてもらった屡薇はやけにそわそわして、さくらの花びら模様の湯呑みに手をつけることもなく黙って正座をしていた。
 何にも約束をせずに訪ねてきたことがおそらく功を奏した、後ろから抱きしめたときに確信したのは真依は湯上がりでジャージ姿なのだということだった。

 気づいてしまった甘い匂いにムラムラが止まらず、我慢がならなくなりそうになっている。


 「屡薇くん、お隣さんとのラブラブなお話、もっと聞かせてよ!」
 彼氏を絶賛ムラムラ中だとは思ってもいない真依は、身を乗り出し輝く瞳で尋ねた。
 「ラブラブな話…?俺と薔ちゃんが…?」
 もっとってことはすでにどっかでしたんだろうな俺、と思いながら、屡薇は彼女の胸に視線がいってしまい困っている。
 高確率でブラジャーをつけていない様子なのが、堪らない(真依はあっちの世界に羽ばたきかけているため自分の有り様は気にかけていない)。

 「えっと、真依さん……ラブラブな話って、どの話?」
 大好きな彼女になぜそんなものを求められなければならないのかちょっといたたまれなくなりつつも、屡薇はいったん心を落ち着かせようと湯呑みを手にした。
 玄米茶は最初適度な温度で煎れてくれたのだろうけど、エアコンの下で少し冷たくなっている。



 「だって屡薇くん、突っ込まれたんでしょ!?攻めのくせに!」
 真依は“ツッコミ”と捉えるべきところをだいぶ生々しく捉えすぎていた。
 ニコニコな大先輩だけは褒めてくれると思う。
 「おおいっ!わけわかんねぇけどなんか手ぇ震えた!」
 わけがわからないなりに震撼できた屡薇は思わず、湯呑みをテーブルの上に放った。
 玄米茶は見事にぶちまけられ、真依のジャージまで濡れてしまった。

 「ちょっと!何やってんの!?」
 「いやたぶんそれ、俺の台詞……」
 「はぁぁぁぁあ!?」
 濡れたジャージに視線を落として、真依は憤慨した。
 これを、自分で蒔いた種と言います。


 「もうっ、屡薇くんのせいでびしょびしょになっちゃったじゃん!」
 テーブルの上も見ながら、真依は困り顔で怒っていた。
 このときの彼女の言い分を、一部分おさらいしてみよう。

 「屡薇くんのせいでびしょびしょになっちゃった」



 ……という、己に都合のよい部分だけが反芻された屡薇は、とうとうムラムラが限界を越えた。
 真依の妄想に比べたら可愛いものとも言える妄想かもしれない。

 「真依さん、どこがびしょびしょになっちゃったの?見せて?」
 「えっ、そんなの一目瞭然……って、ちょっと!どこ触ってんの!?」
 零れた玄米茶を拭く間もなく、にじり寄られた真依は僅かに湿っただけのジャージを捲られ肌を撫でられた。
 くどいようですがこれを、自分で蒔いた種と言います。

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