1/13ページ目 (かっ、可愛いっ…!) ナナは思わず上げそうになった萌えの声を、懸命に呑み込んだ。 午前中は劇の稽古にも励み(旅館にお泊まり中はちゃっかりお休みをもらっていた)、昼下がりには彼女からお願いをして、レンタルしてきてあったザザえもんのDVDを一緒に観ていた。 ナナはザザえもんを観ながらでも主に気を配っていたのは隣だったために、わりとすぐに気づくことができた。 でこぼこが極限までつまらなかったとかいうわけでは決してなくおそらく寝不足が原因で、薔はうたた寝をしてしまっていた。 序盤から話し声がどこか甘ったるく眠そうな感じはしたが、だんだん静かになっていったことからして、彼は彼なりにがんばって起きていたのだと思われる。 途中シリアスも挟まれつつかなりエッチ三昧だったお泊まりデートで薔は、ほとんど眠っておりませんので。 ナナはけっこうな勢いで意識が飛んではいました、そこも睡眠時間としてカウントしてください。 (おおおっ、お写真撮りたい…!) 映画ザザえもんそっちのけとなったナナは、彼を起こさないよう慎重にソファを立ち鞄の中に入れっ放しにしてある携帯電話(←ヒロインはフィーチャーフォン)を取りに向かおうとした。 「ん……」 彼女がそろそろとソファを立ったところで、薔が小さく甘い声を漏らした。 ビクウッ!となったナナが冷や汗ではなくむしろ熱さによる汗混じりに確認してみると、彼はまだ起きてはいなかった。 ほっとしたナナは胸を撫で下ろす間も惜しみ、いそいそと撮影の準備に取りかかった。 (あああああ……可愛すぎる……) 携帯の画面に映し出し、シャッターを切る前にナナはうっとりのあまり涎を垂らしそうになっていた。 早いとこ起きる前にこっそり撮影をしたほうがいいと思われるのだが、彼女はそこまで気を回せていない。 もちろん、ピントを合わせているのはそれはそれは美しき寝顔で、撮らせてもらった暁には彼にやり方を教えてもらい待受画面にしたいくらいだった。 ナナには端から、こっそりやろうという志しがない。 「そのままでお願いいたしま〜す……」 懇切丁寧に眠っている彼氏にカメラマンっぽく声を掛けてみたナナは、シャッターを切ろうとした。 「……ん……?」 声を掛けられた薔はその瞬間、目を覚ましてしまった。 「あ!」 「あ?」 彼が目を覚ましたので自分で蒔いた種に驚愕したナナは、手元が狂いピントもずれてしまった。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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