※※第302話:Make Love(&Forcefully).183
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 「はああ、ザザえもんの映画はいつ観ても面白いですね…!」
 エンドロールが流れ終わっても泣いていたナナは彼に涙を拭ってもらえて、大満足だった。
 しみじみした気分で、パンフレットを始めとしたグッズも買ってもらった。
 「まあ……そうだな。」
 終始内容がよくわからなかった薔だが、喜んでいる彼女が可愛いのでそれで良しとした。

 彼にはこのあと、彼女と一緒に行きたい場所があった。




 (おおおっ…!?)
 手を繋いで映画館を出ていこうとしたとき、ナナはとある上映中作品のポスターに目がいってしまった。
 ザザえもんは観てきたばかりなのでさて置き、彼女はいわゆる“イケメンヴァンパイアとの禁断の恋”というその映画の内容がとても気になってしまったのだ。

 ナナはヴァンパイアのくせに、自分の彼氏のほうがヴァンパイアには遥かに向いていると信じて疑わずにいる。
 できることなら、好きなところにいくらでも咬まれたくて仕方がない、ヴァンパイアのくせに。


 気になっているのは大人気の少女漫画を実写で映画化したという作品で、ちょっとエッチな描写も含まれていた。
 キスシーンもけっこうな頻度で登場するような、代物である。



 「しょっ、薔!」
 「ん?何だ?」
 彼の手を必死になって引っ張り、引き留めたナナは素直に申し出た。

 「わたし、あれも観たいです!」

 と。
 ゆびで“イケメン(ついでに俺様)ヴァンパイアとの禁断の恋”作品を示しながら、輝く瞳で彼を見上げる。




 示されたほうを見た薔はだんだん、不機嫌になった。
 彼女が観たがっているのが、“イケメン”だったので。

 「……ああいうのが好きなのか?」
 「えっ!?それは、その……」
 薔が問いかけたのはイケメンについてで、内容についてだと思ったナナは彼に核心をつかれた気がして照れる。
 するとますます、薔の機嫌は悪くなる。

 やきもちを妬いているところ申し訳ないが、ナナはイケメンはそりゃ大好きだと思われる、イケメンなら見境なくということなく一途に。
 生まれてこのかたただの一度もイケメンなどと呼ばれたことのない人がやきもちを妬くのなら、その気持ちはわからなくもない。
 だがしかし、だがしかしでございます。




 「お願いしますよぉ、一緒に観ましょうよ……」
 照れたナナはもじもじと彼を見上げて、

 「そこまで言うなら仕方ねぇな……」

 可愛さに負けた薔は渋々と彼女と共にチケット売り場へ戻っていった。



 「ありがとうございます!」
 「俺がヴァンパイアだったら、あんなもんじゃなくおまえを咬んでるとこだぞ?」
 「そうなんですっ、それなんですよーっ!」
 「あ?」
 このあと一緒に行きたかった場所はいったんお預けとなり、ふたりは結局ラブラブしていた。

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