2/11ページ目 「高良先輩、おはようございます!」 出勤をすると、開店前の準備をしている綾瀬に挨拶をされて真依はたじろいだ。 前は一種の愛嬌だと思えた口許の笑みが、恐ろしくて仕方がない(前髪が長いため口許くらいしか普段は笑みが見えない)。 この男は、じつは自分をストーカーしていた。 こけしちゃんという大先輩のおかげで気づくことができた真依は、最近は専ら綾瀬に怯えている。 「お……おはよう……」 どうしても引きつってしまう笑顔で返した真依はそそくさと、ロッカールームに向かった。 気のせいだろうか、背後から不気味な視線を感じる。 朝から真依と挨拶を交わせた綾瀬はルンルンと、準備を再開する。 (これは……屡薇くんに相談をしてみるべきなのかな……) ロッカールームに逃げ込んだ真依は最近ずっと、そのことで悩んでいた。 一番に相談をするのはやはり彼氏しかいないと思っても、彼にもしも何かあったら……という恐怖に駆られだし、未だ何も話せずにいる。 ちなみに屡薇はあのあと、プロポーズをやり直す気配すら見せてくれなくなった。 (何気に、屡薇くんをストーカーしてるんだったら……萌えるんだけどな。) 彼の気持ちはさておき腐的な方向で考えを巡らせ始めた真依は、だんだんと恐怖が和らいできた。 あっちの世界はこういうときに(も)役に立つ。 がしかし、真依のイメージだと屡薇も綾瀬も攻めなので、ストーカー設定にした場合どちらを受けに落ち着かせるかで今度は悩みだした。 何なら、屡薇が本命としている薔を嫉妬に狂った綾瀬が攻めるという方向でも、じゅうぶんにいける(もうやめてあげて)。 そう考えるとスムーズに妄想が運びそうで、真依はこっそりにんまりしてしまった。 意外にも、平和だな。 そして、真依にはさらにどうしても気になっていることがあった。 喫茶店で腐的なトークなどなどにもあの美しく白いお花を咲かせたりしたあと、別れ際に、 「あたしにぃ、いい考えがあるのぉぉ。」 と、大先輩はにっこにこで言ってくれたのである。 具体的な内容はいっさい明かされなかったが、“いい考え”とはどのようなものなのか真依はずっと気になっていた。 大先輩がとても頼りになるので、綾瀬と朝っぱらから遭遇してもきちんと挨拶を返したりして、やり過ごせている部分もある。 (あああ、申し分のない先輩を持って幸せだ……あたしが男だったら嫁に欲しい……) と、屡薇はもちろん醐留権先生にも聞き捨てならぬ思いを心で呟いた真依は、支度に取りかかった。 これも、ツンデレの一環ということで。 ……果たして、こけしちゃんはどのような粋な作戦を思いついたのだろうか? <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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