1/14ページ目 輝いて見えるものは、確かに、輝いている。 例え一瞬でも、誰かにとっては、幻影でも。 「わたしはイチゴがいいです!」 テーブルに両手を突いて身を乗り出したナナは、メロンやマンゴーなども用意されているシロップのなかで定番のイチゴを選んだ。 「わかった、」 彼女の要望を聞き入れた薔はふわっふわに仕上げたかき氷へ、濃いピンク色のシロップをかける。 ついでに、それはそれは甘い練乳もかけてくれた。 白くてとろとろでも、練乳です、新鮮な苺にもつけて食べる練乳であります。 何も卑猥なことはありません。 「ありがとうございます、美味しそうですね!」 大きめのガラスのカップにイチゴミルク味のかき氷を作ってもらったナナは、素直にはしゃいだ。 はしゃいでいる様子が可愛すぎて、意地悪心をくすぐられる薔は彼女しか見ていない。 「薔ちゃんと一緒に海に行きてぇ俺は、ブルーハワイで!」 ところが、見事に邪魔をされた。 豆を預けに来た屡薇はちゃっかり、居座っている上にかき氷の味までリクエストをした。 どうやら真依はこけし大先輩のおかげで一緒に海には行けそうになったことを、未だ彼氏に話していないようだ。 「ぶるーはわ」 「おいナナ、どこ見てんだ?」 ブルーハワイのシロップは用意がなく、ナナはキョトンとして、すぐさま薔は彼女の視線を引き戻させた。 さすがに何か言ってもらえるだろうと思っていた屡薇は、呆然。 「そっちにスプーンはねぇだろ?」 「えっ!?これひとつを一緒に食べるんですか!?」 「当たり前だ。」 スプーンを2本取り出してきた薔は1本を彼女に渡し、かき氷のカップに添えていたはずの両手を熱くさせているナナは真っ赤になった。 器を大きめにしたのはもちろん、ふたりでひとつを分けあって食べるからでした。 ……薔ちゃんが何にもツッコんでくれない……と思った屡薇は、無性に泣きたくなった、いつも自分のボケに対して容赦ないツッコミを入れてくれるのも愛情なのだと勝手に気づく。 これ確実に彼女には話しちゃダメな話だ(ツッコむとかの時点でもう)。 「薔ちゃ〜ん?俺ここにいるよ?ブルーハワイがダメならかき氷の氷だけでもいいよ?」 相手にされないとなると切なくて、屡薇は控えめに再び声をかけた。 「あの……何か変なこと言ってますけど……」 「あいつはたぶん生まれる前から変だったやつだ、調子に乗るからいっさい気にかけんな。」 「かしこまりました!」 ナナはいちおう気にしてあげたのだけど、きっぱりと返され彼の言葉に従った。 ………………ひどい。 相手にされていなくとも「生まれる前から変だったやつ」とまで言われているのはばっちり聞こえてしまい、特にガラスでできてはいないハートにひびでも入りそうになった屡薇は抱っこしていた豆にゆびを舐められた。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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